「基礎のひび割れ補修の必要性」でご説明したように、住宅基礎コンクリートのひび割れは鉄筋コンクリートの劣化を促進し、最悪の場合は耐震性劣化のリスクを引き起こします。
「注入ドーム工法」は、基礎クラックをエポキシ樹脂注入によって補修する、国の仕様に則った工法です。
注入ドーム工法の仕組み
- ゴム膜と固定枠から成る注入冶具(注入ドーム)を、鉄筋コンクリートのひび割れの表面に装着してエポキシを注入します。
- ゴム膜の復元力によって、ひび割れ部分にゆっくりと時間をかけてエポキシ樹脂が注入されます。
- ひび割れを完全に封じ込め、基礎クラックを「割れていない状態」に戻すことでコンクリートの諸性能(構造体力・耐久性・水密性・気密性)を回復します。
注入ドーム工法が開発される以前は、ひび割れ幅が小さければ小さいほど、エポキシ樹脂を高圧で注入しなければよく入らないと考えられていました。
しかし高圧注入は、その圧力自体が躯体破壊の要因にもなるという課題がありました。
注入ドーム工法は、この課題を解決した「自動式低圧樹脂注入工法」の一つです。
注入ドーム工法をおすすめする3つのポイント
長寿命なエポキシ樹脂を使用
規格を満たすJIS A 6024:2015適合品(建築補修及び建築補修用エポキシ樹脂)を使用します。
1967年に広島の原爆ドーム保存工事(注入と接着)にも使用されており、50年以上経った現在も健全な状態を維持しています。
国の仕様に則った工法
注入ドーム工法が該当する「自動式低圧エポキシ樹脂注入工法」は、国交省「建築改修工事共通仕様書」に、ひび割れ部改修の標準仕様として採用されている安心の技術です。
大手ハウスメーカーにも基礎のひび割れ補修工法として採用されています。
資材の特長と有資格者による施工品質
注入ドーム工法は機構がシンプルで施工性に優れた冶具を用います。
また(一社)住宅基礎コンクリート保存技術普及協会の認定資格「住宅基礎コンクリート保存技術士」を有する確かな技術者が施工します。
施工の流れ
①ひび割れを計測
現状のひび割れの状態やサイズをチェックし、最適な注入材を選択します。
②注入ドームを接着
注入ドームをひび割れに沿って接着固定します。
③エポキシ樹脂を充填
エポキシ樹脂を注入ドーム内に充填します。
④ゴム膜による低圧注入
エポキシ樹脂が注入ドームのゴム膜の復元力で、ゆっくりと低圧で注入されていきます。
⑤注入ドームを除去
エポキシ樹脂硬化後、注入ドームとシール部を撤去します。※通常、床下側から注入した場合、注入ドームは取り付けたままです。
⑥作業完了!
跡が目立たないよう外部の部分仕上げをして作業完了です。※基礎の状況により少し目立つ場合がございます。
施工に用いる主な資材
注入ドーム
ゴム膜の復元力によりひび割れ内部において細部にまで樹脂が行きわたります。
注入圧力は0.4N/mm2と小さく、高圧注入によるひび割れの拡大・発生や浮き・はがれなどの心配はありません。
グルーガン
熱で溶かして接着させる「ホットメルト接着剤」を使うための工具です。クラックを埋める際や注入ドームを固定する際に使用します。
接着剤には「グルースティック」と呼ばれるスティック状の樹脂を用い、熱で溶かした樹脂が冷えて固まることで接着します。
SRクイック(下述)より早く固まりますが、古い基礎では使えない場合があります。
SRクイック
速硬化型のエポキシ樹脂接着剤です。クラックを埋める際や注入ドームを固定する際に使用します。
作業性が良く、様々な物の接着に使いやすい接着剤です。また比較的古い基礎でも使うことができます。
エポキシ樹脂カードリッジ
ひび割れのサイズに合わせて、低・中・高の3種類の粘度を使い分けられます。また連続で追加収入が可能です。
混合ノズル(スタティックミキサー)
2液性のエポキシでも、入念な攪拌も正確な計量も必要ありません。また正確に攪拌できるため品質にムラが出ません。
床下空間で扱いやすく、準備・作業の時短にもつながります。