一般社団法人 住宅基礎コンクリート保存技術普及協会

樹脂注入工法と連続繊維補強工法の違い

連続繊維補強工法とは

※(一社)繊維補修補強協会ホームページから引用

既存コンクリート構造物などの補修・補強技術として現在最も注目を集め、普及が図られているのが連続繊維による補強工法です。
本工法は、アラミド繊維や炭素繊維などの軽量かつ高強度で耐久性に優れた繊維を補強材料とし、構造物の表面に接着して薄層の補強層を形成して構造体を補強する工法で、曲げ補強やせん断補強を行うのが基本です。
補強後は断面や荷重の増加はほとんどなく、構造物の使用条件に影響を与えません。また、重機が不要で溶接などの煩雑な作業がなく、施工が安全かつ簡便に行える注目の工法です。

基礎の「ひび割れ補修」の観点から見た連続繊維補強工法の問題点

①両面貼りでないと効果がない

  • 性能試験としてJIS A1191「コンクリート補強用連続繊維シートの引張試験方法」がありますが、引張試験のため、巻き付け以外の方法では施工の強度を示す根拠になりません。
  • 基礎の片面貼りでは偏荷重となり、補強の効果が1.6倍程度とそれほど出ません。
  • 片面では引張力を生かせず接着力で耐えるのみとなります。しかし、両面貼りは化粧モルタルが施してあると施工が困難です。

②コンクリートの劣化状態によっては効果が発揮しない

  • コンクリートが劣化していたり、粉っぽくなっていたりする場合は接着不良を起こします。(右図)
  • 連続繊維補強材の接着試験としてJIS A 6909「建築用仕上塗装材の付着試験方法」がありますが、曲げ補強の場合はコンクリートと剥離しないことが重要です。

③樹脂の塗布だけでは、ひび割れ内部まで浸透しない

  • シール工法は0.2㎜未満のひび割れ補修を対象としています。※注入工法は0.2~1㎜以上を対象としています。
  • 内部に空気や水分が残るため、中性化の進行や内部鉄筋の錆びを防ぐ効果は低いです。(右図)

④国の定める「ひび割れ補修」の仕様は連続繊維補強工法ではない

  • 公的な建築物のひび割れ補修の仕様書である「建築改修工事共通仕様書」では、樹脂注入工法が標準仕様となっています。
  • 自動式低圧樹脂注入工法で基礎のひび割れを補修し、その上を耐震壁にして耐震補強の補助金の申請を行っている事例があります。
  • 連続繊維補強工法は無筋の場合は有効ですが、有筋の場合は過剰補強になります。
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