一般社団法人 住宅基礎コンクリート保存技術普及協会

エポキシ樹脂注入工事の歴史

今日コンクリート基礎のひび割れの補修手法として普及しているものの一つに「エポキシ樹脂注入」があります。
ここではその歴史について触れたいと思います。

原爆ドームの保存工事にも貢献

この手法は、我が国には1962年(昭和37年)にヨーロッパ留学から帰国した今泉勝吉博士(当時:建設省建築研究所)によって紹介されました。
その後、1964年(昭和39年)に建設省建設技術補助金による「高強度接着工法の建築的利用方法と接着効果に関する研究」が認められ、日本建築学会の接着工法研究委員会で、エポキシ樹脂による接着と注入の工法が研究されたのです。

この研究成果を基に、エポキシ樹脂注入工事は建築現場での実用的で斬新な工法として浸透していきました。

原爆ドーム

写真提供:広島県

1967年(昭和42年)には、全国から献金された浄財5,000万円を投じた原爆ドームの保存工事において15トンのエポキシ樹脂が注入と接着に使われ、世界遺産の保護に貢献しました。

1988年(昭和63年)に広島市が行った保存調査では、エポキシ樹脂による接着の強度が20年前とほとんど変わらす、健全であることが実証され、エポキシ樹脂の耐久性に高い評価が与えられています。

国の共通仕様書に採用されています

1977年(昭和52年)、日本住宅公団(当時)は、「注入用エポキシ樹脂等性能基準に関する研究」の成果を基に、翌78年(昭和53年)に公団住宅用の「注入工事標準仕様書」と「樹脂の性能評価基準」を制定しました。
同時期に発生した宮城県沖地震では、エポキシ樹脂注入工法を実施した建物には被害が少なかった事実もあり、エポキシ樹脂注入の実効性の高さが再評価されています。

1989年(平成元年)には「保全工事共通仕様書」に、1992年(平成4年)には建設省大臣官房官庁営繕部監修(当時)「建築改修工事共通仕様書」に、エポキシ樹脂注入工事が正式採用されました。

この中で、注入工法の種類は、手動式、機械式エポキシ樹脂注入工法と自動式低圧樹脂注入工法の3種類としています。同仕様書では「適用は特記による。特記がなければ自動式低圧エポキシ樹脂注入工法とする。」となっており、自動式低圧注入工法を標準としています。

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